2015.06.18

最先端医療として注目されるプロバイオティクス(前半)

皆さん、こんにちは。代表の内田です。
記録的に暖かった5月が過ぎ、6月ももう半ばが過ぎ、すっかり梅雨の季節になりました。この時期は食べ物が傷みやすくなったりもするので、お腹のためにも気をつけないといけませんね。

今日は、医療機器からは直接的にはちょっと離れますが、そのお腹(腸)にまつわるお話をさせて頂きたいと思います。

私の友人に株式会社明治のR-1というヨーグルトを毎日摂るようになってから一切風邪を引かないと言っている人がいます。実際にこのヨーグルトはインフルエンザの抑制効果があることを謳っています。(http://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/1073r1/top/

私も、これを知って最近そのヨーグルトを時々摂っています。それ程長い期間、また頻度も摂っていませんので、風邪についての実感はないのですが、続けて数回摂取した際に再現性を持って便通に変化が起きたことはわかりました。ですから私の腸の中に確実に何か変化が起きたことはわかりました。

ヨーグルトを沢山摂取するブルガリアの地で長命の方が多く、ヨーグルトを食べると長生きできるという説はかなり昔から言われてきました。そして最近、科学技術の進歩により腸に住んでいる細菌の分析が進み、にわかに腸内細菌に関する科学が注目されるようになりました。

プロバイオティクス。この言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

 

腸内細菌の基本情報

人の腸管には実に1,000種、100兆個もの細菌が暮らしているそうです。これらの細菌はそれぞれテリトリーが決まっていて、特定の場所に集まって暮らしています。このあつまりを称して叢(そう)(草むらのこと)といい、腸内細菌叢という言葉があります。そもそもなぜ人は腸内細菌を抱えているのでしょう。食べた物の消化を助けてもらったり、自分の体では作れない栄養素を細菌に作ってもらったりしています。腸内細菌がいるのといないのとではエネルギー効率が全然違うのです。

腸内細菌は酸素が苦手な嫌気性とそうでもない好気性のものがいますが、上部消化管には口から入った酸素があるため、消化管の奥の方に嫌気性は多くいます。腸内細菌にはタンパク質を腐敗させてアンモニア、アミン、フェノール、インドールなどの有害物質を発生させるいわゆる悪玉菌(ウェルシュ菌)などがいますが、乳酸菌は脂肪酸を作り出し腸のpHを酸性に保つことで悪玉菌を退治します。なので、善玉菌と言われているのです。

 

腸内細菌の成立

お腹にいる胎児には腸内細菌はいません。ですから、子宮の中で便のようなものをお尻から排出していますが、胎児は感染症にはかからないのです。では体内における腸内細菌はいつできるのかですが、実に生後24時間以内に大腸菌、腸球菌、ブドウ球菌などが増殖を開始します。人の腸にどのような細菌が住んでいるかは人によって実は千差万別です。つまり腸内細菌は人それぞれに個性があるのですが、人がどんな腸内細菌叢を持つかについては遺伝しないそうです。出生直後から離乳期は人の体にとって免疫そのものや免疫的に異物に対する応答などを獲得するきわめて大事な時期ですが、この時期にこうした体の免疫に綿密に関わりながら、自分のお腹の中でコアとなる腸内細菌叢が固まっていくのだそうです。例えば、生後1年以内や幼少期の抗生物質、抗菌剤の投与が炎症性腸疾患の発生を増やすという研究もありますし、ある国の衛生環境の変化が、腸内細菌叢の変化につながり、結果的に発生する病気に変化をもたらしているという研究結果もあります。腸内細菌と健康とはこれまで人間が考えていた以上に大切な関わりがあったのです。

また、中高年を過ぎるとビフィズス菌(善玉菌)が減り、ウェルシュ菌(悪玉菌)が増えることがわかっています。ウェルシュ菌が増えると有害物質が増えると先に述べましたが、これらは発がん物質であり、肝臓が懸命に処理します。ところが、処理能力を超えると全身にまん延してしまいます。つまり、がんの発症と腸内細菌叢とは無関係ではないのです。

 

科学の進歩と腸内細菌叢

腸内細菌は培養が難しいものが多く、古くはあまり多くの種類が検出できませんでした。しかし、技術の進歩により細菌の遺伝子(DNAやRNA)を直接測定することにより腸内細菌の全容が飛躍的に解明されるようになったのです。それでもあまりにも多くの種類があるため、なかなか個人個人の腸内細菌叢を綿密に調べることは容易ではなかったのですが、遺伝子検査を早く、安価に実施する技術(次世代シークエンサーなど)により、簡単な採血検査や採尿検査などと同じような感覚で個人の細菌叢を調べるような時代になろうとしているのです。

今回は腸内細菌に関する概要をお話しました。次回は科学の進歩によって注目されるプロバイオティクスの可能性についてお話したいと思います。
それではまた次回。